637 鶴と船

 

僕は石の上にすわる
海を眺める
海の上 浮かんでゆく船(カラーブリ)。
僕は草の上に寝転ぶ
空を眺める
空の上 渡ってゆく鶴(ジュラーブリ)。

そして鶴は叫ぶ
「あそこに船が浮かんでるよ、
 空想でふくらんで私たちのところまで昇ってくる。
 あんたはあの船にのり込んで
 私たちの後ろを泳いでついておいで
 私たちの後ろを泳いでついておいで」 

僕は船に叫ぶ、
僕は鶴に叫ぶ。
「いやだよ、ありがとさん!」大きな声で叫ぶ。
「勝手に泳いでいきゃいいさ!
 勝手に飛んでいきゃいいさ!
 だけど僕はどこにも行きたくないよ。」

鶴は僕に叫び返す
「じゃあ船はほっとけばいい!
 私らがあんたを翼に乗せて運んであげるよ。
 すべて あんたにみせてあげる
 あんたに話してあげる
 あんたに話してあげるよ すべてのこと」

「いやだよ、ありがとさん!」叫ぶ。
「もう僕は飛ばないよ。
 あんたがたが僕のとこへ帰ってくればいいんだ。
 僕はここから
 ぜんぜん
 どこへも
 行きたくないよ!
 僕は光の(ソビエト)の側に残るよ!」

1939

                                                            挿絵 河原朝生